顔料とメデイゥム

顔料・メディウム

顔料

油絵具を作る時、目的の色を得るためには、顔料を使わなければなりません。顔料とは、平たくいえば水や溶媒に溶けない有色の粉末の事をいいます。
同じ色素で、染料も顔料と同様、色の粉末には違いないのですが、こちらは水や溶媒に溶ける性質を持っています。それでは染料を油絵具に使ってみたらどうなるでしょうか。確かに鮮やかな発色を生みますが、重ね塗りをした時、下地の色が上に重ねた色ににじみ出してにごり、使った筆の毛まで染めつけてしまいます。これでは絵を描こうにも描けません。
   やはり顔料のように溶媒に溶けないものでなければ、油絵具の要求を充たすことができないのです(実際は染料を不溶性にしたものを使っていますが、それは顔料の範囲に属するものと解釈します)。また、顔料といってもいろいろな種類があります。大別すると下記の3つとなります。

1.無機顔料

油絵具の顔料の中で、最も頻繁に使われているものです。以前は天然の鉱物質を高温で焼成したものを使いましたが、今日では化学的に合成されたものがほとんどです。有機顔料に比べ、一般的に隠ぺい力と耐候性はまさっていますが、色相の鮮明度はやや劣るようです。なお、この顔料の中では、油絵具の乾燥を促進させる性質のものがあります。
(例)プルシャンブルー、コバルトブルー、ビリジャン、バーントアンバー等

2.有機顔料

以前は動物や植物から得ていたのでこの名がありますが、今日では研究開発が進み、合成染料を体質顔料に沈着させて、不溶性にしたレーキが主役をつとめています。無機顔料に比べ、一般的に色相鮮明で着色力に優れていますが、耐候性、耐溶媒性となりますと、無機顔料には一歩及ばないようです。なお、この顔料の中には、油の乾燥を阻害させる性質のものがあります。
(例)ローズマダー、ピンクマダー、サップグリーン、モーブ等

3.体質顔料

広義には無機顔料に属しますが、発色の目的で使用される顔料ではないので、このように区別して呼んでいます。主に油絵具の調子を整える(透明性、コシ、ノビを与える)為に使われています。透明度のある炭酸カルシウム、半透明な硫酸バリウムなど、色によって使いわけています。

4.主要顔料一覧

>主要顔料一覧表(PDF)

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メディウム

顔料だけではキャンバスに付着しないばかりか、発色も悪く、筆を運んでも色が伸びていきません。
そこでキャンバスへの付着力をつけるために、接着性のある展色剤が必要となってきます。現在、油絵具にはもっぱら乾性植物油が使われています。なかでも乾燥力のある、リンシードオイル(亜麻仁油)とポピーオイル(芥子油)が特に好まれています。オリーブオイルやヒマシ油のように、いつまでもベタベタして乾かない油では、油絵具として用をなさないわけです。その他にコシを強くするための樹脂(天然、合成)、顔料と油をよくなじませるための安定剤などを添加します。こういったものを総じて「メディウム」と呼んでいます。

乾性油の乾き方

ポピーオイルやリンシードオイルなどの乾性油は、その成分中に空気中の酸素をつかまえる特殊な構造を持っていて、酸素を吸収しながら次第に固まってゆく性質があります。ですから空気中の酸素をつかまえやすくしてやれば、油の乾燥が早くなるわけです。そこで登場してくるのが、「シッカチーフ(乾燥促進剤)」です。コバルト、マンガン、鉛などの金属がその代表例としてあげられます。ただし、シッカチーフは使用例を誤りますと、“亀裂”や“チリメンじわ”、“ゆず膚”などの原因にもなりますので、注意書きをよく読んで使ってください。

リンシードオイルは乾きが早く、廉価なので油絵具のメディウムとして最適なのですが、油ヤケ(黄変)する欠陥があります。これは不飽和脂肪酸の一種であるリノレン酸が成分中に多量に存在するためです。リノレン酸は黄味を帯びる色素を持っていますので、屋内に置くと次第に黄変してきます。しかし、黄変したものでも直射日光下におけば、紫外線の作用で色素が一時的に分解されて白色になります。この変化は可逆的に何度でも繰り返されます。
リンシードオイルに比べて、ポピーオイルは乾きがいくぶん緩慢なところがありますが、リノレン酸の量も少なく、油ヤケの心配もほとんどないといってよい位です。高品質を要求される油絵具のメディウムとして広く使われる所以です。

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